キモ仮面おったまげ国家アタック


Vフォー・ヴェンデッタ」(画像をクリック)

全国にて公開中



先週は都合により休ませていただきました。
申し訳ございません。



このブログでは単館系映画を取り上げる率が高いので、ハリウッド映画嫌いなのかと思われがちですがそんなこたぁないのです。
ハリウッド映画だろうがなんだろうがおもしろいもんはおもしろい。
とりわけ私は、アメコミ原作の映画が好きなのです。といってもアメコミに対する思い入れはまったくありません。読んだことも殆どない。でも不思議なもんで、あ!これおもしれえ!と思ったハリウッド映画はアメコミ原作ものが多いのだよな。
スパイダーマンは勿論のこと、(映画では)あんまり評判のよくない「X−MEN」も「デアデビル」も好きであります。
でもね、もっとも好きなアメコミ原作映画は「ブレイド」なんです。
「シンシティ」とか気の利いたこと言えなくてごめん。
でもブレイドはかっこいいのだ。
刀と空手で闘う黒人(ハーフヴァンパイア)というだけでたまらんのだ。
あ、よく考えたらマーヴェリックのマンガばかりだな。「ファンタスティック・フォー」は未見だが見たらはまるんであろう。



しかしながら今回取り上げるのはDCコミックスの「Vフォー・ヴェンデッタ」であります。ってマーヴェリックとDCの違いは「ジャンプとマガジンの違いくらいだろう」くらいにしか思っていないんだが。
マトリックス」でおなじみのウォシャウスキー兄弟が脚本を書いた、とか、ナタリー・ポートマンが坊主頭になって熱演、だとかは話題になっているが、
この映画の何が一番いいかというと、主人公であるVがとてつもなくかっこいいのである。

グギャー!
なんとかっこいい佇まい!
このお面は「ガイ・フォークス」というもので、もっと見やすい写真が以下のもの。

どこからともなく「キモーイ」という声が聞こえてきそうだ。
ガイ・フォークス」というのは17世紀のイギリスに実在したカソリック教徒で、プロテスタントである国からの度重なる弾圧に耐えかねた末、国会議事堂を爆破しようとしたんだが捕まって死刑になったそうで、それ以来イギリスでは毎年11月5日は「ガイ・フォークス・デイ」とし、ガイ・フォークスの人形を燃やし、花火を打ち上げて国家が転覆されなくてよかったよかったと祝うらしい。(イギリスでは花火は禁止されている)


それを踏まえたうえでストーリーを軽く説明
近未来の世界では第三次世界大戦が起こり、世界は混乱を極めている。アメリカは内戦が今も続き、国としての機能が殆ど損なわれている状態であるが、イギリスは独裁国家となっているが故に混乱は起こっていない。
国は街中に監視カメラを設置し、家庭での会話を盗聴し、ニュース番組は情報操作を行うことで常に国民を管理している。美術品、音楽、娯楽番組などはすべて禁止という徹底管理社会。
国民もまた、そのような国家に従順に従っているのだった。少しでも国に懐疑的な発言をすればすぐに秘密警察によって逮捕され、刑務所あるいは強制収容所に送り込まれるという、まるでナチスドイツなんである。
特にマイノリティと呼ばれる人種(活動家や左翼者や異教徒、同性愛者など)は見つかれば即処刑。
そんな恐ろしい国家に単独で立ち向かっていくテロリスト兼アナーキストが、この気味の悪い仮面の男、Vなのだ。



Vは裁判所を爆破したり暗殺したりいろいろとテロリストなことをやらかしてくれるんだけど、基本的に武器が
・腰に何本も刺してあるナイフ
・インチキ空手
なのがとにかくかっこいい。
部屋で鎧の人形に向かってフェンシングの練習をしたりもするんだが、それでも使う武器は短いナイフとインチキ空手って!いいなあこのB級ぶり。
ストーリーを見るとかっこいいテロリストのようにも思われるが、テロリストがかっこいいわけがない。スーパーヒーローなわけがない。
そもそも仮面が気持ち悪い。
「なんだその卑怯な手は」と思うようなこともやってしまう。
そして不死身の完全無欠の人間外生物ではなく生身の人間なのだ。
そういう、かっこよくないところがかっこいいんである。(早川義夫の反対ですね)



ちなみに本編は2時間以上あるのだが、Vの素顔は一度も出てこない。常に仮面かぶりっぱなし。それなのに人間的な感情がありありと見えるのは、ヒューゴ・ウィービングの役者としての力量だろう。ちなみに「マトリックス」でエージェントスミスやってた人なのですがね。



そのVに触発されて自分の意志で立ち上がっていくようになるイヴィーを演じたナタリー・ポートマンもまた素晴らしいです。坊主頭になったら凛々しくなっていた。凛とした美しさとはああいうことを言うのだろう。
Vとイヴィーの触れ合いは切ない。禁止された音楽をかけて踊るシーンは泣けました。



というようにB級映画として愛でたくなる要素が満載の映画なんだが、「目の前にある現実を鵜呑みにするな」とか「国家に従順になるな、自分でいろいろ考えろ」などということも伝わってくる映画でもあります。
イギリスに限らず、アメリカも、この日本も、国家だけが強くなっていく一方で個人の権限や自由などはどんどん制限されていくという現実。テロは正しいことではない。しかし、今、現実に起こっていることを「他人事」「どっか他所で起こっていること」と思っちゃいないか?
この世に関係ないことなんてなんもない。
自分で物事を考えさえすれば、自分の中にも「V」がいるということ、あるいは自分もガイ・フォークスのお面をかぶることがあるということに気づけるはず。




原作のコミックでは映画よりもさらに「アナーキズム」「国家に黙って従ってるんじゃねえよ」という意志が強いらしいので、どうにか読みたいんだが、都内の本屋4,5軒回ったのに見つからんかったです。
心底読みてぇ!
国家によって手に入らないように操作されてたらやだな。そんな国家転覆してやる。